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[第2章]ノブコ怒る!

笑いあり、涙あり、万年床ありの大スペクタクル長編物語が、いよいよここから始まった。
なかなか本題に行かないが、さっきも言った通り、五合目からのスタートである。メンバーは9名。上の写真がその全メンバーである。
左上から、涙目ササベッチ。彼女はこの登山で大変な試練に出会ってしまう。詳しくは後で紹介する。黄色の上着を着ているのがいつも「ルルルルル」と笑う嶋さん。その上は我らが健兄さん(リ社時代の部会で漫才師の中川家が命名。つまりトミーズの健ですな)。白っぽい帽子を被っているのがスパルタ教育が得意な先輩ノブコ。涙目ササベッチとの壮絶なバトルは、聞くもおぞましい話だ。その横は寂しん坊イケモである。彼は、戦禍を逃れて疎開先に向かう途中に我々と合流した。彼のザックの中には、ドリフで使うような大きな鍋や、ウラの畑で取れたサツマイモなどが入っている。本当の話である。赤い帽子が僕。一番右が、弱冠25歳で会社を経営する若社長。左下は、ニューカレドニア帰りのサロン・ド・ユキ。そして、一番手前でデカいツラをしているのが杉。彼と二人で居ると、彼の方が社長だと思われてしまう。僕より10歳も年下なのに・・・。
以上の面々だ。あと、健兄さんの後ろにボンヤリ見える人は、健兄さんに取り憑いた富士山で無念の死を遂げた地縛霊の方なので気になさらずに。ただ、健兄さんはその方を姫路に連れて帰ったそうだ。合掌。
当初はもっと人数が、多かったのだが、「コロコロ里香ちゃん」はドクターストップで不参加。「アヤヤ」のモノマネが絶品!と聞いていたので非常に残念だ。他にも、不慮の仕事が入ってしまったベイブや、ドリカムのコンサートとバッティングした豆タンクの他、結婚式で無理、ヨットレースでダメ、前々日に酔っぱらって転んで痛いので不参加です、ということで段々数が減り、結局は9名で行くことになったのだ。

道のりはまだ始まったばかり。涙目ササベッチの足取りも、この頃はまだ軽やかだった。
五合目から六合目、七合目くらいまでは比較的、楽に進んでいけた。空気が薄いせいで頭は少々痛いが、思ったより大変ではない。ただ、道が単調なのでだんだん飽きてくる。その単調さに痺れを切らした健兄さんが、
「杉!なんかオモロイ話してぇな。後に引くようなオモロイ話」と言ったので、僕がすかさず、
「そうそう、ヒグピー氏のようなヤツたのむわ」と追い打ちをかけた。
しかし、ヒグピー氏の腸が捻れるような笑いはなかなか真似できるものではない。
具体的には、[いざ爾霊山へ!歴史オタクの5人組が繰り広げる旅順・大連ドタバタ旅行記]を読んでヒグピー氏の抱腹絶倒なギャグの数々を堪能して欲しいのだが、と書いている内に、いま一つ思い出した。
ちょうど、その中国旅行から帰ってきて1ヶ月ほど経った頃、ヒグピー氏が社長に就任したというので、僕が企画して開いた“社長就任お祝い会”の席での話だ。
仕事が長引いて杉だけが、まだその席に到着していなかった。
ヒ『杉田くん、忙しいねんな』
僕「そうなんですよ。うちの期待のホープですから、しっかり仕事してもらわんと」
ヒ『そんな忙しかったら、彼女もなかなか出来ひんな』
僕「いやそれが、最近出来たらしいんですよ彼女。つい最近ですけどね」
杉が来る間、そんな会話(前フリ?)が行われていた。
そうこうしている間に杉が到着。そしてヒグピー氏得意の、延髄狙い打ち回し蹴りギャグが炸裂したのだ。
ヒ『杉田くん、彼女できたんやって?』
杉「は、はい。でも、まだ付き合い始めたところです・・・」
ヒ『聞くところによると、もう中絶したらしいやん」』
杉「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
このおかしさが、文章で伝わるかどうか心配だが、それより富士山登山である。

老体にムチ打って登る健兄さんは、早速酸素を吸入。
それは確か七合目での出来事だった。
心配してた「ルルル」笑いの嶋さんや若社長は、思ったより元気で割とスイスイ登っている。しかし、思わぬ人が苦しんでいた。涙目ササベッチである。
列からだんだんと遅れを取り始め、砂埃で涙目に拍車がかかっている。すると辛そうな顔の涙目ササベッチに、先輩ノブコが優しい声色で
「何してんの。頑張りぃな」と言った。
涙目ササベッチは、一見優しそうなトーンだが、先輩ノブコのスルドイ激励に、「は、はい」と答えるのがやっとだった。
そんなスルドイ激励も虚しく、涙目ササベッチの遅れは、狭くなるどころかドンドンと広がっていった。
すると先輩ノブコは、僕だけに聞こえるように、こっそりと
「ちょっとヤキ入れてきますんで、先に行っといて下さい」
と言いながら、方向を転換して涙目ササベッチに向かって歩いていった。遠目にも涙目ササベッチの恐怖の様子が伝わってきた。
涙目ササベッチのそばまで行った先輩ノブコは、まず涙目ササベッチの頭をコヅいた。周りから見ると一見、先輩が後輩の頭を可愛くコヅいたように見えるが、その破壊力はコヅかれたものにしか分かるまい。実際、涙目ササベッチは、回し蹴りを決められたK-1ファイターのように脳が揺れたのだろう。先輩ノブコがコヅいた瞬間、涙目ササベッチは膝から倒れかけた。
「ギョエ!」
いくら同じ会社の同じ部署の後輩だからって、それはやりすぎではないかと僕は思ったが、周りが気付く様子もないのをいいことに、先輩ノブコは容赦しなかった。
恐らく口の動きから、「いい加減にしぃや。根性入れや。みんなに迷惑かけてんねんで!」と先輩ノブコが涙目ササベッチに言っているのが分かった。恐怖におののいた涙目ササベッチは、足早に僕らに向かって歩いてきた。
なんだか泣きそうな顔だ。すると先輩ノブコはすかさず、
「何泣いてんの!」
(怖っ!)僕はノブコの剣幕に驚いた。涙目ササベッチはその凄まじい先輩ノブコの言葉に、
「す、すいません、コンタクトが痛いんです」
そう言えば先輩ノブコは、「RX-8」という走り屋さんが乗る、とっても早いクルマを購入したらしい。ツインロータリーエンジンで250馬力なんですよぉ、ポルシェでもカンタンに追い抜けちゃうんですよね。燃費は悪いんですけどぉ、と僕に自慢気に話をしてたっけ。
きっと、そんなクルマで、頭の尖った怖そうなお兄ちゃんと山を走りに行っているんだろうな。勝負だぜ!とか言って、ブォンブォン言わせてコーナー攻めているんだろなぁ。「このクルマ、ちょっとアンダーステア気味だなぁ」とか「ヒール&トゥがうまく決まった!」と言ってるんだろうな。そうか、先輩ノブコはそういう人なんだ。
僕は態度を改めなければならないと思った。もちろん先輩ノブコに対してだ。怒らせるときっと「根性焼きで勝負しましょう!」とか言いだすに違いない。タバコなんか熱くて・・・、考えただけでも恐ろしい。
「ササベと後で追いかけますから、先に行っておいてください」
先輩ノブコの言葉に、僕は「では先に参ります」と、もちろん敬語で答えた。

疲れ果てた涙目ササベッチを追いつめる先輩ノブコ。
七合目から八合目は確かにキツかった。僕らも、やっとのことで八合目に辿り着き、ほっと一息ついて休憩所から下を眺めた。すると、遅れていた先輩ノブコと涙目ササベッチの姿が見えた。よく見てみると、先輩ノブコが杖で辛そうな涙目ササベッチのモモの部分をシバきながら歩いている。そして驚くことに、涙目ササベッチは、自分の荷物の他に先輩ノブコのモノと思われる荷物を担いでいるではないか。
(う〜む。恐ろしい)
僕は先輩ノブコの、全身全霊を掛けた後輩教育に正直おそれいった。。

[第3章]道中は、それぞれのキャラが滲みでていた。
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