■正露丸(征露丸)



[現代の意味]大幸薬品の薬の名前。

[語源]

 日露戦争時、満州大陸へ出征する兵士の間で、下痢や腹痛など胃腸病の蔓延に頭を悩ませていた。そこで、開発されたのが[征露丸]だった。
 1902年に中島佐一がクレオソートの丸剤の製造に成功。 日露戦争の時に軍はこれを予防のために軍隊に配付し連日服用させる事とした。しかし特異な臭いで服用しづらいため飲まれることが少なく、胃腸症状を訴える兵隊も一向に減らなかった。そこで軍首脳部は一計を案じ、クレオソートの服用命令を明治天皇の名で出し、クレオソート丸の名称を征露丸とした。これによって一般の将兵に飲まれるようになり、下痢・腹痛を訴える者が減ったといわれる。

 日露戦争後、戦地での征露丸の効果が帰還兵により過大に喧伝され、戦勝ムードで「征露丸」という名称がウケたこともあり、征露丸の一般販売権が民間に開放されると多数のメーカーで製造販売されるようになった。

 第二次世界大戦終結後、国際信義上「征」の字を使うことには好ましくないとの行政指導があり正露丸と改められた。

 1954年に大幸薬品が商標登録して他のメーカーに「正露丸」の名称を使わせないようにしたが、1974年に最高裁で「正露丸は一般名で固有の商標ではない」という判決が出された。現在では正露丸の商標は大幸薬品が持っているが他社が正露丸の名で販売してもよいということになっている。

 現在でも、日本医薬品製造株式会社は「征露丸」の名前で販売している。




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